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突然に奪われた個人の自由
ジョージ・タケイが描く日系人強制収容所の暮らし
絵本『MY LOST FREEDOM』を翻訳出版したい!

子どもたちに差別や偏見の怖さを伝えたい。サウザンブックスPRIDE叢書編集主幹、宇田川しいからメッセージ!

こんにちは、サウザンブックスです。『MY LOST FREEDOM』翻訳出版クラファンへのご参加、誠に有難うございます!
絶賛ラストスパート中のこのプロジェクト、クラファン成立まで残り40%ほどと進んでおります!成立まで、どうか情報拡散にご協力ください。
 



そして、SNSにて絶賛情報拡散中の、サウザンブックスPRIDE叢書編集主幹で、スタートレック好きの宇田川しいから、応援のメッセージが届きました!
 


子どもたちに差別や偏見の怖さを伝えたい

 
裁判もなく突然に自由を奪われる
 

この絵本は、幼いジョージ・タケイが体験した日系アメリカ人収容所のお話です。
1942年、太平洋戦争の最中、アメリカ大統領フランクリン・ルーズベルトは、日系人を「敵性外国人」とみなして強制収容所への収監を命じました。その結果、およそ12万人の日系人が、住む家を追われ、財産を奪われて、荒地の中の収容所に入れられました。国家の脅威となるようなスパイ活動などの根拠は薄く、裁判もなしに、国家安全保障の名の下に自由を奪われたのです。

ジョージは日本から渡米した父親と、おばあさんの代で渡米したお母さんのもとに生まれました。ですから日系三世ということになります。出生地主義を取るアメリカでは、アメリカで生まれた子どもは、親の国籍や滞在資格に関わらず市民権(アメリカ国籍)を与えられます。つまりアメリカ生まれのアメリカ人であるはずのジョージは、敵性外国人というレッテルを貼られ、収容所暮らしを余儀なくされたのでした。収容所に収監された日系人のおよそ3分の2はジョージと同じく市民権を持つ二世や三世でした。
偏見や恐怖が、罪のない市民の自由を奪い、社会から排除したのです。

敵を作り出し排除するトランプの政治
 
これを、80年前に起きた、私たちとは無縁の出来事と考えることはできません。
トランプは大統領就任後、矢継ぎ早に、マイノリティを排除する政策を打ち出しています。トランスジェンダーを排除するかのように、連邦政府は男性と女性の二つの性別のみ認めるという大統領令を発し、移民取り締まりと共に出生地主義を見直す大統領令を出しました。出生地主義の見直しが実現すれば、非正規移民の子どもたちはアメリカの市民権を得られなくなります。ちなみに出生地主義は、それまで認められなかったアフリカ系アメリカ人の完全な市民権を確立するために採用されたという歴史があります。
 
そして、トランプは19世紀に制定された法律まで引っ張り出し、出生地主義に関する「課税されないインディアンを除き」という文言を根拠に、ネイティブアメリカンがアメリカ人であることを疑問視するという呆れたことまで言い出しました。
そもそもの建国の歴史において、ネイティブアメリカンを虐殺し、辺境に追いやってきたことは、アメリカ人が直視すべき事実であり、「ネイティブアメリカンはアメリカ人ではない」とは、なんと恥知らずな物言いでしょう。
 
このように、トランプは「敵」を作り出し、排除する政治を行なっています。それは、日系人を「潜在的な敵」として、収容所に押し込めたのと同じ精神的病理によるものでしょう。
日本も他人事ではありません。先日行われた埼玉県戸田市議選では、クルド人に対するヘイト活動を行なっている人物がトップ当選を果たすという、なんとも残念な結果になりました。
ヨーロッパにおける極右政党の台頭なども、軌を一にする事象でしょう。
マイノリティに敵のレッテルを貼り、排除していった先には、極端な同一性に偏った、息苦しい全体主義的社会しかありません。
そのような暗い未来を子どもたちに残さないためにも、私たちは歴史から学ぶ必要があります。

「答えは歴史の中にある」

北丸雄二さんのインタビューに答えてジョージ・タケイはこう述べています。
「アメリカ社会では、実はこういうことは何度も起こっている。人種差別の長い歴史があるから。若者たちはその恐怖を経験したことがないだけで、でも、コロナ禍でも同じことが起きていた。トランプがウイルスは中国製だと煽ってアジア人差別や暴力事件が起きた。彼はそういう人物です。非常に危険で、完全に非理性的で、しかも再び大統領の権力を握る。次は特にトランスジェンダーの人たちを攻撃する。それはLGBTQ+全部に波及する。だから、備えなくちゃ。そういう4年が来る。でも、答えは歴史の中にある」
 
差別や偏見がいかに非人間的で酷いものであるか、私たち日本人は、いわば「差別された側」として身につまされる思いでこの絵本を読むことになります。これは、差別や偏見のない未来を作ってほしいという、ジョージからのメッセージです。メッセージを子どもたちに伝えるために、この絵本をぜひ出版したいと思うのです。

 

宇田川しい
ライター、編集者。セクシュアルマイノリティがプライドを持って生きるためのシリーズのサウザンブックスPRIDE叢書編集主幹。肉屋を支持するブタにならないためのクィア・マガジン『Over』編集長。
x:@siiudagawa

2025/01/28 17:49